「からだと心」についてもっとよく知り、健康づくりをしていきたいもの。自然でホリスティックな視点を大切に、暮らしの中で手軽にできるセルフケアをご紹介します。
Q. 東洋医学では『気』という言葉をよく使いますが、 西洋医学ではどう捉えますか?
よい『気』をキープするにはどうしたらいいのでしょうか?
A. よい『気』をキープするにはまず、 姿勢と休養、食事を見直しましょう。
『気』は西洋医学的に見ると「血やリンパの流れ」
『気』というと、なじみがない人にはちょっとあやしく感じるかもしれませんね。でも「元気そう」とか「いい人そう」とか「あの人とは気が合う、合わない」など、私たちは普段から人や場の雰囲気を感じ取っていますが、『気』もそれと同じようなものです。いつも元気で雰囲気のいい人と一緒だと元気になりますし、元気のない人といると気分が落ち込むこともあります。そうやって『気』は周囲の人にも影響を及ぼします。
西洋医学では『気』という概念はありませんが、『気』は血液やリンパ液の流れに似ているかもしれません。血液やリンパ液のめぐりが悪くなればからだに滞りが起きて調子が悪くなり、気分的にも落ち込んできます。これは東洋医学的にいう「瘀血」(悪い血液が溜まっている状態)で、同時に『気』の流れも悪くなっている状態です。川の流れが滞れば汚れが溜まるのと同じで、からだの中を巡る水分や栄養の流れが滞れば、汚れが溜まって健康だけでなく気分も阻害してしまうのです。
『気』はある程度なら自分でコントロールできる
うつの人は『気』が落ち込んでいる状態ですが、ちょっとした「雰囲気」の変化を感じ取って軽いうちに対処すれば未然に防げる可能性があります。落ちてしまった「気」を自分自身で上げる方法には、
❶心をコントロールすること
❷姿勢をよくすること
❸一歩踏み出す(行動してみる)こと、の3つがあげられます。
❶は、何でもよいほうに考えるようにすることですが、これはなかなかむずかしいかもしれません。 ❷なら、誰でも簡単にできます。うつだと姿勢が悪くなりがちですが、胸を張っていると自然と気分が明るくなります。 ❸は、『気』が落ちているとマイナス思考になり、起き得ないような出来事をいろいろと考えて行動できなくなっているところを、勇気を出して一歩踏み出すことです。悪い出来事は想像したほど起きず、恐怖は自分でつくり出していることに気づくことができます。
うつは心配性の人がなりやすい傾向にありますが、「自分はうつにはならない」と自信満々な人も要注意です。自分の力を過信して疲れているのに全力で走り続け、ある瞬間電池が切れたおもちゃのように動けなくなってしまうことがよくあります。
そういう人には、まわりが気づいてサポートしてあげられるといいですね。医師は患者さんが普段と比べてどんな状態なのかを判断できません。家族や親しい友人なら普段との違いがわかるので、休養を進めることができるでしょう。
「ちょっと疲れたな」と思ったら、こまめな休養+栄養を!
『気』をアップさせるには、栄養と休養も大事です。人の精神は脳内に無数にある神経細胞同士が神経伝達物質(セロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンなど)を出したり受け取ったりして制御されています。神経伝達物質をつくる材料がなければ情報伝達がうまくできなくなり、うつになりやすくなります。神経伝達物質の材料となる大豆系のレシチンやオメガ3系の油を食事からバランスよく摂るとよいでしょう。
うつでは悩み事が増えて情報量は多くなるのに、情報を十分伝達できないので頭の中が交通渋滞状態に。脳の働きが鈍くなると動きたくても動けず、食事をする気も起きなくなります。そうなれば一次的に薬を使って神経伝達物質をつくる方法もありますが、食事から自然な形で栄養を摂り、神経を健康な状態に戻していくことが重要です。
休養も大事です。脳を酷使すると、神経伝達物質の材料が足りず頭が働かなくなってきます。私も働き過ぎると思考が止まることがあるので、疲れを感じたら大好きなコーヒーと音楽を楽しみながら15分ほど休息するようにしています。元気な人なら休息すれば回復します。疲れたら少し休む、というちょっとしたことができないと、うつなどの病気になってしまいます。「いつ休むか」の判断が大事ですが、どのくらいがんばれるかは自分にしかわかりません。「疲れた気がする」というサインを逃さないことが大切です。
動物は元気がなければ安静にし、伸びをしたり草を食べたりと、誰から教わるでもなく、からだを整える方法をよく知っています。私たちも動物的な感覚を取り戻し、『気』をもっと生かして健康維持を心がけたいですね。