昔、南伊豆町の大瀬と下流(したる)という場所のちょうど境のところのに「見晴し(みはらし)」という場所があって、そこには1軒6畳ほどの家が数十軒、山の斜面に建っていました。
そこには日本各地、世界各地から旅人が集まり、音楽を奏で、お酒を飲み、焚火をし、夢を語り合い、五右衛門風呂に入り、何度も取材が入り・・・という、何とも素敵な世界が広がっていたと言います。
ですが、小学校も近くにあるという理由もあり、昼間からお酒を飲んだり、ロン毛のお兄ちゃんたちがフラフラと歩いていたりする様は、地元の人も良くは思っていなかったようで、一度火事をやってからは、物凄い圧力が地元の方達から掛かったと言っていました。
そこの地主さんが亡くなってから、すぐに息子さんから「ここから出て行ってくれ!」となり、そこに残ったのは、大工のはめさんだけとなりました。
今でこそ、地主さんの息子さんと良い関係を築き、大工小屋という形で、1つの家だけは残っていますが、他の数十軒の家は全て自らの手で取り壊し、今ではジャングルになってしまいました。
そんな「見晴らし」から見える海の眺めは最高です。
昨日、初めて、そのアジトにお邪魔しましたが、作業場の中にはインドの音楽が流れ、お香が焚かれ、70歳の大工のまささんは巻煙草を巻きつつ、67歳のはめさんは大好きなショートピースに火を点けて、二人で煙草を吸いながら昔話を僕にしてくれるその様は、何とも不思議で心地よい時間でした。
しばらくして、はめさんが海が見える場所を案内してくれました。
眼下に広がる海原を眺めながら1時間くらい雑談をしました。
はめさんも、まささんも、30・40年前に東京、湘南から移住してきた大先輩たち。
二人共、都会の空気を吸って育ってきているので、都会と田舎、それぞれの良さを知っていて、それが大工仕事に出ていて、その感性というか、デザインというか、質感というか・・・そんな二人のスタイルが僕は好きなんです。
僕も2年半前に湘南から移住してきた者ですが、彼らが地元と交われなかったその要因をお話しの中から探りながら、僕はそこをもっと交われるように前進していきたいと思うのです。
南伊豆のローカルの人たちとも、南伊豆が大好きで移住してきた人たちとも、もっと、もっと、交わりたいと思うのです。