オール開発者の真面目なコラム(その2/3)!

さて洗剤における”持続可能性”の諸条件を探る場合に、キーワードとなるものが幾つかあります。

①完全な油分分解剤の開発
②洗剤そのものの生分解性の向上
③原料使用量の削減(質的向上を含む)

大きくはこの3つです。


やや説明的になるものの…さらに加えていうならば、あと2つ。

④食品としてそのまま利用出来る栽培作物を洗剤の原料として使っていること
⑤原料供給国が新興国となり、先進国だけの原料ではなくなり、大幅な開墾による”先住民の住環境も含めた生態系”の破壊と、労働搾取と健康被害が発生していること

これらが複合的に絡みあい、出口の見えない問題を生み出してます。わたしは研究者であり自然保護活動家としての見地から、④を除く総ての問題を解決して来ました。ひとつひとつ説明します。

①については、序文で述べた弊社の油膜処理技術が既に解決をもたらしています。一般的に洗剤の主成分である界面活性剤は、付着した油分の水中移動を容易くする目的で開発されており、その後水中に移動した油分は、界面活性剤から離れ、また油膜や油塊に戻るため水汚染を根源的に解決することになっていません!

②については、洗剤に含まれる総ての原料がそのまま自然界に流出してしまった事故を想定した生分解性試験(DOC法=OECD301A)をおこない、21日間で易生分解性(有機物が自然環境中の微生物によって水と二酸化炭素に分解されること)と判断されています。ちなみに7日間ごとの測定で28日間を経過しても易生分解性の判断がくだせなければ、生分解性が低く、環境へのダメージを与えやすい原料とみなされます。そして現状この②の結果を開示しているメーカーが少ないことは、環境影響をメーカーだけでなく消費者が意識していない問題だとも言えます。(大気汚染に繋がる自動車の排気ガス規制は1970年=50年前から取り組み始めていたというのに)

③については、③-1 洗剤の主成分である界面活性剤の原料の使用量を削減出来るか!?という取組みと、③-2 水の使用量自体を削減出来るか!?という取組みの2つのアプローチが”洗剤のサスティナブル化”に繋がる課題でした。

まず先に、③-1 界面活性剤原料の削減の取組みから説明します。これは、界面活性剤の原料となる油脂を何から(鉱物油or動物油脂or植物油脂)いただくか?という問題以前の問題です。つまり、何を原料にしようとも大量消費は環境に与える負荷が大きいという必然の問題の解決策を練ることでした。言い換えればREDUCE リデュースに関するアプローチの仕方です。主に界面活性剤は、水中に移動した油膜の処理に利用し、付着した汚れを水中に移動させる方法自体は界面活性剤に依存するのではなく、それ以外でおこなうものと考え、現在流通している市販の洗剤との比較においても1/7の界面活性剤で同等以上の汚れ落ちを実現しました。これは、原料となる作物の栽培面積を7倍にしたことと同じです。手付かずの自然を次世代に残すための取組みでもあるのです。

また次には、③-2 水の使用量の取組みから説明します。まず弊社では、国内大手メーカーに先駆けること10年。濯ぎ2回タイプが一般的であったの洗剤を1999年に濯ぎ1回タイプにすることが出来ました。これだけで、節水率は60%を超えました。そして2019年、令和元年の7月。2013年から開発を手掛け、5年の歳月と1年間の社内外の検証を重ね、タテ型洗濯機における濯ぎゼロ回を実現出来ました。知る限りにおいて、界面活性剤を利用した洗濯洗剤では初めてのことだと思います。これで現行の洗濯方法と比較してさらに約50%の節水が出来ます。単に水資源の枯渇問題を解決する決め手となるだけでなく、貯水池ダム削減による生態系の回復と生物多様性の確保に繋がります。

④の可食植物油脂を洗剤に使っている問題に参ります。ここはまだ、わたし共には未解決の分野です。ですが、その洗浄効率のことを除けば、取組みが始まっています。洗浄効率が低い、つまり界面活性剤を多量に使わなくてならないのなら、例え非可食植物からの採集であれ、生態系に影響を及ぼしかねず二の足を踏んでいます。ですが将来、洗浄効率の高い非可食植物油脂を原料とした界面活性剤は作れると確信しており、更なる研究を重ねております!

いよいよ⑤まで来ました。世界的な潮流は、こちらに日本語で詳しく解説されています。界面活性剤として最も利用されているパーム椰子の栽培についてです。
産地、栽培方法、採集方法などを管理して持続可能な土地利用を推進するもので、RSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)と呼ばれています。参加方法には2種類あり、1つには加盟し資金を提供する方法と、1つには加盟のみならず積極的にその認証油を使って製造しようという2種類です。残念ながら、わたし達が利用しているものは認証油ではありません。国内大手の油脂メーカーが作ってくださったものの中から、洗浄効率が高い界面活性剤原料を選んでいるからです。もちろん、選定させていただいた油脂メーカーさんもRSPO自体には賛同され、加盟されております。ただメーカーとして、どの原料名のものが認証油100%使用と特定することは出来ないと回答いただいております。この辺りは、オーガニックコットンやオーガニックウールを使って製品を作っている大手アパレルメーカーが、自社製品は100%オーガニックにしますと宣言出来ていないことと根底は同じです。しかし、わたし達の洗剤でいうならば、製品中の界面活性剤の約20%がパーム油由来のものであり、製品総体の3.5%に過ぎません。わたし達ももちろん100%認証油のものを使いたいものですが、市販の洗濯洗剤の1/7の界面活性剤量に留めて洗浄力を出し、更にその界面活性剤合計量の約20%部分だけを議論の中心に挿げ替えてしまうとすると”サスティナブルの可能性”の議論から逸脱してしまうように思えます。

続きの(その3/3)はこちら

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