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衣類はきれいになっても海が汚れる洗剤は本末転倒 洗濯は選択が大切

海を汚さず人にもやさしい洗濯洗剤『オールシングス・イン・ネイチャー』。少量で汚れが落ち、すすぎは0回。香りも自然。使い続けると洗濯槽や排水溝のにおいも消え、生きものにもやさしい…。
そんな魔法のような洗剤を開発したのが、有限会社がんこ本舗代表の木村正宏さんです。環境に対する責任とは何か。社名どおりのがんこな製品哲学に迫りました。

Profile

木村 正宏さん(有限会社がんこ本舗代表)
(ニックネーム きむちん)


1958年愛媛県宇和島市生まれ。東京農業大学卒業後、兵庫県経済農業協同組合連合会に就職。農薬販売などに携わった後、農家を助ける専門機械を作りたいと上司に直談判し新部門を設立。その頃、個人活動として自然保護団体「Nature Association」を設立。登山にも打ち込み、日本勤労者山岳連盟の推薦でインドヒマラヤ・ガンゴトリⅢ遠征隊に選ばれたのを機にプロ登山家として独立。山から下界を眺めるなかで水循環の重要性、すなわち生活排水が海に与える影響を知り、環境改善につながる生活用品の製造・販売を開始。99年にすすぎ1回の洗濯洗剤を世界にさきがけて発売する。フリーマーケットから次第に広がり、今では環境派市民の指定銘柄的存在に。

 

洗剤の本質的な問題は今も解決されていない

― 洗濯用洗剤のTVコマーシャルを見ていると、白さや肌ざわり、香りの広がり、殺菌力などが強調されていますが、木村さんが開発した『オールシングス・イン・ネイチャー』は、まったく違ったアピールをされていますね。

僕が今の事業を始めたきっかけは、海を汚さない洗剤を作ることは可能だろうかという素朴な疑問からでした。洗剤問題というのは1960年代から表面化した社会問題です。

まず指摘されたのは、汚れを落とす界面活性剤の化学成分が生物に与える毒性。同時に問題となったのは添加されているリンです。汚れは水道水のような硬水だと落ちにくいんですが、軟水で洗うと落ちやすくなる性質があるんですよ。洗剤にリンを加えると水道水に含まれるミネラルと強く結合するため軟水化します。洗浄力は高まるのですが、リンは植物の必須栄養素のひとつで化学肥料の原料でもありますから、洗濯によって大量に川や海に流れ込むと水を富栄養化させます」

― 富栄養化は湖のアオコや海の赤潮の原因ですね。異常発生したプランクトンが死んで酸素欠乏となり、魚や貝も連鎖的に死ぬ現象…。

はい。そのためリンの代わりに重曹やクエン酸で軟水化するようになってきました。界面活性剤も今ではほとんどのメーカーがヤシ油など天然素材に切り替えています。でも、洗剤が抱える問題は本質的に解決していません。

―どういうことでしょうか。

その前に洗剤の原理からお話ししておきましょう。僕は今の事業を始める前、環境保護団体で水を守る活動をしていました。あるときタンカーの油流失事故がありました。そんなとき必ずニュースに出るのが油処理剤です。油を処理するってどういうことだろう?

これを勉強すれば水質汚濁の問題を解決できるのではと思い、大学の先生に聞きに行ったんです。原理は石鹸でした。フェンスで海面を囲ってオイルを閉じ込め、そこに強アルカリの薬剤をまく。すると、油とアルカリと海水のミネラルが反応して鹸化が始まり固形化するんです。鹸化した油は比重が重くなって海底に沈む。それが油処理の原理だと教わりました。先生、それってひょっとして海面がきれいになるだけの話じゃないですかと聞いたら、そうだよと。

体から分泌される皮脂や台所で使われる油は有害ではないけれど、水に流れ込んで時間がたてば固形化するんですよ。難分解性になるので、川や海の底で酸素を奪いながら変質していきます。つまり緩やかな腐敗。やがて周辺の酸素を使いきり底を生き物の住めないヘドロ状にします。じつは同じことが家庭でも起きていています。排水溝の詰まりや洗濯槽の垢です。

― いやなにおいがしますね。

あれは鹸化した油の変質によるにおい。そういうものは下水処理場でみんな分解されるんでしょう?と思っている人も多いと思いますが、量に対して処理の能力が追い付いていないのが現状です。処理施設の下流に行くとわかりますよ。ヘドロや芳香剤などいろいろなにおいが強烈に漂ってきます。

天然由来の界面活性剤を使おうが、無リンにしようが、世の中の洗剤は油の行方までは考えられていないんですよ。洗濯物がきれいになればよいというところで思考が停止してしまっている。

汚れの主成分である油を微生物が食べやすくする

― 理想的な油の分解とは、どういういう形を指すのですか。

微生物に速やかに食べられること。そうすれば油は水と二酸化炭素にきれいに分解されます。問題は油には引き合う性質があり、洗剤によって引きはがされても時間が立つとふたたび水の中で集まって粒子が大きくなることです。

― サラダドレッシングの中の油滴の動きのような感じですか。

そう。解決の基本は油を凝集させず、どれだけ小さな粒のまま水に留め置くことができるか。そうすれば細菌やプランクトンが食べやすくなります。これを可能にしたのが、90年代に登場したナノ化技術です。物質を超微粒子化すると、今までの化学の法則で知られていたのとまったく異なるふるまいを起こすことが知られるようになりました。

つまり新しい可能性が生まれる。じゃあ、洗剤に使われている界面活性剤をナノ化したらどうなるのか。実験をしてみたくなったんです。

― そもそも洗剤は、個人の力で作ることができるものなのですか。

化学の知識があればできますよ。うちが使っている界面活性剤の主成分は、6個以上の炭素が鎖状につながった高級アルコール。それと植物から抽出したエッセンシャルオイル。どちらも揮発性物質で、水と油の両方に親和性があります。その力で油汚れを水の中へ浮かしやすくするとともに、ナノ化技術によってできた非常にきめ細かい泡が繊維の奥まで入り込みます。すすぎ回数が0回でよいのは余分な泡が立たないからです。

問題の油の行方ですが、これもナノ化技術で粒子ひとつひとつに水のベールを張ることに成功しました。海へ流れて行っても油どうしが凝集しないので、微生物が上手に分解してくれます。これが『オールシングス・イン・ネイチャー』の原理。簡単でしょ?

― そんな簡単で効果的な方法を大企業が導入しないのはなぜ?

値段が高くなる。コマーシャルを打ってもたくさんは売れないからじゃないですか。うちはラベンダーなど植物を100%使用したエッセンシャルオイルを総量の1%も入れています。動機は香りをナチュラルにしたかったからですが、植物の精油成分はそもそも防御物質なので抗菌効果があります。ですからわざわざ防腐剤を入れる必要もないのです。

― 一般的な洗剤にはさまざまな原料が加えられていますね。

界面活性剤は濃度を薄めると腐りやすいんですよ。だから防腐剤を入れる。蛍光剤を加えるのは色を実際より白く見せるためです。それから静電気を抑え肌触りをよくする柔軟剤。そして人工香料。

これらの成分も分解が遅いので海に大きな負担をかけます。でも、それはメーカーのせいばかりではなく、消費者の選択の結果であることも忘れてはいけません。今の日本人は神経質すぎます。

― はっきり言いますね(笑)

言いますよ。僕はそもそも洗剤屋になんてなりたくなかったんです。今でも本音では洗剤を売りたくない(笑)。誰も油の出口という問題に手を付けてくれなかったから自分でやっただけ。これは生まれ持った性格でしょうかね。

ラボは福岡市内にある。水環境に悪影響を与えないこと。人体に安全であること。このふたつを鉄則に洗浄原理の可能性を探り続ける。「誰もやったことのない原材料どうしを組み合わせ、新しい調合方法を発見したときが一番楽しいですね」

生産工場。実機での製造は、ビーカーでの実験どおりにならないこともある。調整に際しては職人的な勘も求められるという。「創業当時は洗濯機で調合していました。新製品の最初の商品化というのは、何度経験しても気が引き締まります」

 

お遍路文化に育てられた困りごとを無視できない性格

― 出身は最後の清流と呼ばれる四万十川支流の村と聞きました。

ええ。それはきれいな流れでした。子供の頃はその川で泳いだりウナギやハヤをつかまえて遊び、獲物はおかずになりました。ただ、農薬が普及しだすと、水路のフナが白い腹を返して浮くようになりました。農協で働いた時代は、その農薬を売る仕事もしましたよ。

水を強く意識するようになったのは、登山の遠征隊に選ばれたときにベースキャンプを張った氷河です。ガンジス川の源流で、テントの下を雪解け水がゴーゴーと流れてました。この水が偉大なるガンガーを経て海へ行くのだなと思ったとき、自分が今後やるべきことが見えてきた気がしました。

― 社会的課題を解決する起業家の走りですね。

困ったことを放っておけない性分は、きっと親譲りなんだと思います。うちの実家は四国八十八か所のお遍路道に面しています。お遍路さんが多い日は、雨戸が閉まる音が次々に聞こえてくるんですよ。お接待もしょっちゅうだと負担がかかり、居留守を使わざるを得ない。庄屋のような立場だったうちは、たとえ貧乏をしてもお遍路さんは必ずお世話するようにというのが家訓で、お接待を欠かしませんでした。泊まってもらうための小屋もありました。

幼少期は四万十川の支流が遊び場だった。「川っていうのは、水がきれいで魚もたくさんいてあたりまえ。そう思っていました。大好きな川や海がずっとそうであってほしいというのが、僕が洗剤づくりを始めた動機です」

 

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