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健康知識

健康維持とミネラルの関係

あらゆる栄養素が足りていない現代人。 栄養素が足りないことによって、どのような弊害が起きているのでしょうか。
摂取基準の値が小さいため見逃されがちなミネラルを中心に、 いかにそれが健康維持のために大切かについて、医師の伊藤明子さんにお聞きしました。

栄養素不足を甘く見ないで!

健康を保つために必要な栄養素には、「三大栄養素」と「微量栄養素」とがあります(近年は「五大栄養素」ともいいます)。「三大栄養素」は必要量が多く研究が進んでいるためにそう呼ばれていますが、最近では「微量栄養素」の研究も進み、同じように重要であることがわかってきています。

「微量栄養素」には、ビタミン、ミネラル、ファイトケミカル(植物性の微量の栄養素)などがあり、どれもが重要なものですが、ここではとくにミネラルについて見ていきましょう。

ミネラルとは地球を構成する鉱物要素のことをいい、人体に不可欠なものです。厚生労働省では「ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、カリウム、リン、硫黄、クロム、マンガン、鉄、銅、亜鉛、セレン、モリブデン、ヨウ素、コバルト、塩素(ヨウ素、コバルト、塩素はほとんどの日本人が不足することはないので摂取基準を設けていない)」の16種類を必須ミネラルとし、「食事摂取基準」を設けています。

厚生労働省では5年に一度、国民の栄養状態を調査していますが、2015年の時点でカリウム、リン、カルシウム、鉄、亜鉛などは平均して不足していることがわかっています。また、ミネラルだけではなく、ビタミンやタンパク質などについても不足している人が多いのが現状です。

「たくさんある栄養素のうち、一つくらい足りなくても大丈夫でしょう?」と栄養不足を軽視する方が多いのですが、必要な栄養素は一つでも不足すると病気のリスクが上がってしまいます。

下図は「リービッヒの最小律」を木の樽で表現したものです。必要とされる栄養素のうち一つでも足りないと、からだがうまく機能しなくなってしまうことを示していますが、この図のように、ほとんどの日本人は水が漏れてしまっている状態です。

「リービッヒの最小律」を示した図。樽の一片一片は、一つでも高さが足りないとそこから水が溢れ、水位はそれより上に上がらない。栄養素も同じことで、一つの栄養素の最低値に引っ張られて全体の機能が下がってしまう。
※「Yield」とは、「歩留まり」という意味。

 

ミネラル不足は病気に直結する

では、ミネラルが不足すると何が起きるのでしょうか。ミネラルの中でも一番研究が進んでいるのが「鉄」です。鉄欠乏による貧血を放置すると、認知症やガンになるリスクが高まるので、絶対に放置してはいけません。鉄欠乏の症状としては、息切れ、めまい、朝起きられない、疲れやすい、などがあります。

また、記憶力と関連している脳の海馬の働きが低下したり、パニック障害になるリスクが上がったり、仕事の処理能力が鈍ったり、うつになるリスクも上がります。体内の鉄が低い女性が出産した子どもの鉄も低くなり、学習障害や発達障害、癇癪を起こしやすいなど情緒障害のリスクも上がります。

次によく研究されているのが「亜鉛」ですが、これも国民が平均して足りないもので、今、注目されています。亜鉛は数百の酵素の構成成分で、骨、皮膚、脳など全身で重要です。亜鉛が足りないだけで、からだのさまざまな部分がボロボロになってしまいます。亜鉛は記憶低下(海馬の機能低下)や不妊とも関わっています。

また、「銅」も重要なミネラルで、当院での採血結果でも特に女性では不足している方が相当数います。銅も多数の酵素の構成成分であり、エネルギー産生や皮膚や筋肉の形成、やる気ホルモンをつくるのにも必要です。

ここまで代表的なミネラルについて解説しましたが、このように、ミネラル不足が病気に直結するのです。

有害金属をデトックスするために

ミネラルは有害金属を解毒するためにも必要です。目に見えず、感じることができなくても、私たちは日常生活の中でヘアケア用品や化粧品、水、食品などから、有害金属を取り込んでいます。これは現代社会で暮らしている限り仕方がないことです。ミネラル同士では有害なものを排除する相互作用をもつものもあるため、有害金属を蓄積しないようにするためにも十分なミネラルを摂取することが大切です。

私たちの細胞にはいろいろな仕事をするレセプター(受容体)があり、鉄のレセプターが鉄をキャッチするために待ち構えていても、鉄が不足していると鉄と似た別のもの、鉛などの有害物質を取り込んでしまうのです。それによって有害金属が蓄積し、神経障害などが起きてしまいます。いかに有益なミネラルを必要量補充し、有害金属を取り込まないようにするかが大切です。

病気になる前に栄養と向き合おう

ミネラルをはじめ栄養素は、できるだけ食事から摂取するのが理想的です。最近では、「プロテインパッケージ」という考え方があり、これは、たとえば鮭(動物性タンパク質)を一食あたり100グラム食べれば、タンパク質に付随して繊維質や水分、ビタミン類や微量ミネラルも一緒に摂取できるという考え方です。

しかし、ときにはサプリメントを取り入れることも必要でしょう。血液検査の結果で不足しているミネラルを補うのが望ましいですが、それが難しい場合は、個々のミネラルサプリメントではないマルチタイプのものもあります。

たとえば「フルボ酸」というものもありますが、これは分子の大きさが500〜2000ダルトンという非常に小さな植物性ミネラル成分が含まれており、からだに必要なミネラルイオンを運ぶキャリアの役割をすると考えられています。

現時点ではヒトでの研究は行われておらず、人間の体内での働きや効果は解明されていませんが、こうしたものを一つひとつ医学的に検証し、エビデンスに基づいて、効率よく栄養摂取をしていくことも一つの選択肢だと思います。

私のクリニックのポリシーは「マイナス2歳から健康をつくる」というものです。生まれる前から、すでにからだの発生(受精卵から新生児までの過程)ははじまっていますし、ライフステージの変化によっても、いかに栄養を摂取すべきか変わります。現代社会で健康に生きていくために、一人ひとりが栄養への関心を高めると皆がより健やかに過ごせそうです。

伊藤 明子さん
小児科医医師、公衆衛生専門医、同時通訳者。東京外国語大学卒業、帝京大学医学部卒業、東京大学大学院医学系研究科公共健康医学専攻卒業。赤坂ファミリークリニック院長、NPO 法人Healthy Children, Healthy Lives 代表理事、東京大学医学部附属病院小児科医師、東京大学大学院医学系研究科公衆衛生学/ 健康医療政策学教室客員研究員、有限会社アクエリアス代表取締役社長。近著に『小児科医がすすめる最高の子育て食』(講談社)。「林修の今でしょ! 講座」などのテレビにも出演。二児の母。

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